三谷幸喜『不信~彼女が嘘をつく理由』

不信

東京芸術劇場シアターイーストで三谷幸喜 作・演出の芝居
『不信~彼女が嘘をつく理由』が上演されています。

ウインブルドンのセンターコートのように
劇場の中央に長方形の舞台が設置され、
両サイドに客席が置かれています。

マンションの中庭を挟んで向かい合う2つの部屋、
そこに住む二組みの夫婦が、まさにテニスのように
攻撃と守備を交互に行う物語。

段田安則優香の夫婦は、このマンションに越してきたばかり、
向かいの栗原英雄・戸田恵子夫妻を頼り交流が始まります。

ある時、優香がスーパーで買い物をしていると、
戸田恵子の姿を見かけます。
声をかけようとすると、なんと戸田恵子は次々と商品を万引きしていきます。
マグロの頭まで持って行ってしまう大胆不敵。
彼女はクレプトマニア(窃盗癖)という病気なのです。

この目撃に端を発し、次々と起こる事件、
だんだん、誰を信じていいのかわからなくなり
そして迎えるどんでん返し。
芝居としてはオーソドックス。

それにしても、『真田丸』で天下分け目の大勝負まで描いた三谷幸喜が、
二組みの夫婦という最小単位の芝居をこの期に及んで創ったのでしょう。
三谷幸喜のことです。きっと何か企んでいるに違いありません。

今回は、段田安則・優香の側から見た物語が描かれていました。
でもその裏には、栗原英雄・戸田恵子側から見た物語もあるはず。

優香がたまたま目撃した万引き、
実は戸田恵子がわざと見せていたのかもしれません。

芝居のポスターを見ると、『不信』の文字が鏡像になっています
つまり、今回の物語は鏡の向こう側の話で、
いずれ、鏡のこちらの話が上演されるのではないでしょうか。
その時明かされる真のどんでん返しこそ、
ウインブルドンの決勝にふさわしい感動を呼ぶことでしょう。

P.S. 舞台に六脚のスツールが置かれていて、
場面転換ごとに瞬時に移動するさまが、
テニスのボールボーイの動きのようで、
これもまた見逃せません。


PARCO Production 『不信 ~彼女が嘘をつく理由』

作・演出 三谷幸喜
出演 段田安則 優香 栗原英雄 戸田恵子

2017年3月7日~2017年4月30日(日)
東京芸術劇場 シアターイースト