時間を味わう – Douglas Gordon & Jonathan Monk “PARIS BAR”

Jonathan Monk

TARO NASUでダグラス・ゴードンとジョナサン・モンクの共同制作が展示されています。
タイトルの「PARIS BAR」は、ベルリンにあるレストラン。

Michel Würthleによって1977年にオープンし、
すぐにアーティストや役者たちに愛されるようになります。
なかでも、Martin Kippenbergerはキュレーターとして
レストランの壁に次々と絵を掛け、アートに溢れる店の様子を自ら描きました。

このレストランで、ゴードンモンクはランチをとります。
今回展示されているのは、二人が注文した料理の名前をネオン管で描いたもの。
それぞれの料理が、テーブルの上にあった時間だけ点灯する仕掛けになっています。
つまり、彼らは、料理がテーブルにいつからいつまであったかを計っていました。

今回のランチの時間は1時間半、
全てのネオンが点灯し消えるのを見続けると同じだけ時間がかかります。

しかも、最初にBadoit(水)が点いてから、ワインが点くまでが結構長い。
メニューを選ぶのに時間がかかったのでしょうか?

Jonathan Monk
おしゃべりしながらランチをすると、1時間半なんてあっという間ですが、
能動的に動いている場合と、自分ではコントロールできずただ待っている場合とでは
時間の感覚が大きく違います。

一方で、ワインが点くまで待っていると、
料理ごとに色が異なり、新たな料理が点灯した瞬間
空気がガラッと変貌することに気づきます。

Jonathan Monk

Jonathan Monk
この変貌に出会うと、次の料理を待ちわびるように、
次はどんな色が点くのか期待感が高まっていきます。

繁華街のネオンが互いに主張しあい、チカチカ点滅を繰り返すのに対して、
料理の名前を描いた光はとても落ち着いていて、静かに時を刻んでいます。

早く新しい料理に出会いたいと急いていた気持ちが、
いつしか心地よくなってくる不思議。
これが、この作品の大きな魅力です。

Badoitから始まり、全てが消えるまで一人佇んでいられたら、
それは最も贅沢な時の過ごし方。

Jonathan Monk
ダグラス・ゴードン & ジョナサン・モンク「PARIS BAR」
2016年4月8日〜5月14日
TARO NASU


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください