古都で世界の歴史に触れる−PARASOPHIA

PARASOPHIA

京都市美術館を中心に開催されている国際現代芸術祭PARASOPHIA
国内外の約40組のアーティストの作品が展示されています。

各アーティストは、開催前にしばらく京都に滞在し、
その経験をもとに新作を制作し、旧作とともに展示するというルールが
設定されたそうです。
そのため、アーティストが見つめてきたそれぞれの国の歴史に
新たな視点を投じる構成になっています。

京都市美術館は、昭和8年に大規模公立美術館として設立され、
今回の重厚な作品を展示するにはぴったりの場所といえます。

タイのアリル・ルンジャンは、2013年のヴェネチア・ビエンナーレでの
インスタレーションとビデオ作品『Golden Teardrop』を出品。
真鍮でできた金色の涙の彫刻8,000個をつなげたインスタレーションは
神秘的な輝きを放っています。
そして、Golden Teardropを支える梁は、アユタヤ王朝時代(17世紀)の木造建築の再利用。

PARASOPHIA

PARASOPHIA
Golden Teardropは、タイの砂糖菓子「トーンヨート」の別名でもあります。
トーンヨートはアユタヤ王朝の時に広まり、
日本からも朱印船が行き来し、砂糖の交易も行っていました。
美しいインスタレーションの影に、砂糖をめぐる長い歴史が隠されています。

ブラジル出身のグシュタヴォ・シュペリジョンは、雑誌「LIFE」の記念写真集(608ページ)の
各写真に記載されているキャプションを全て消して、
自ら新たなキャプションをつけた『The Great Art History』を展示。

20世紀を象徴する膨大な写真全てに、異なるキャプションをつけることで
全く別の歴史が生まれます。

PARASOPHIA

PARASOPHIA
画像や映像は、ものごとの記憶を鮮明なものにする力がありますが、
実は、キャプションしだいで、その印象ががらっと変わってしまう危うさがあるのです。

ヨコハマトリエンナーレで巨大インスタレーションを出品した
倉智敬子+高橋悟は、今回も巨大インスタレーション
『装飾と犯罪—Sense/Common』を展示。

法廷のようでもあり、監獄のようでもある空間、
全面真っ白で、どことなく不安定な感じを受けます。

ところどころ石が置かれ、京都らしい白砂の石庭を思わせるも、
この石は尖閣諸島の形になっているらしい。

PARASOPHIA

PARASOPHIA
次の間には映像が流れています。京都崇仁地区の空撮。
そして、床には、空白の地図が散らばっています。

PARASOPHIA

PARASOPHIA
崇仁地区は、同和地区としての歴史を持ちます。
元崇仁小学校は、still movingというアート企画が行われていて、
その教室の一つに『装飾と犯罪』と同じ地図が置かれ、持ち帰ることができます。
空白の地図にどんな道を描くのか、
私たち一人ひとりに問いかけられています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください