ピエール・キュリーが発見した音 – Nile Koetting 『Hard in Organics』

Nile Koetting

山本現代で、ベルリン在住の若手アーティスト、
Nile Koettingの個展が行われています。
物理学の粋を集めて作られて空間なのに、
理科教室的な雰囲気はなく、
むしろライブハウス。

薄いフィルムに書かれた手紙、
フランスの物理学者ピエール・キュリーが
妻のマリー・キュリーに宛てたラブレターです。
フィルムがスピーカーになっていて、
手紙を読んだ音声から編集した音が聞こえてきます。

ピエール・キュリーがスピーカーの原理を発見したことへのリスペクト。

そして、私が最も素敵だと感じた作品が
「On Symphony in Physical Phenomena, 2015」
このタイトルも、ピエール・キュリーの論文からとったもの。

Nile Koetting

おもむろに置かれた2台の譜面台、
よく見るとアクリルでできた譜面台は二重。
光っている部分に、小さな透明の結晶があり、
二重の譜面台で挟んでいます。

耳をかたむけると、鳥のさえずりのような澄んだ音が
わすかに聞こえてきます。

結晶はロッシェル塩と呼ばれる酒石酸ナトリウムカリウム、
結晶に圧力を加えると電荷が生じ、
逆に電荷をかけると振動する圧電効果、
ピエール・キュリーが発見したスピーカーの原理です。

かつてロッシェル塩は、実際にイヤホンやスピーカーに使われていました。

ピエール・キュリーが試みたであろう実験、130年の時を経たチャレンジ。

まず、ロッシェル塩の結晶を作らなくてはなりませんが、
古い文献にしか作り方が書かれていなかったそうです。
結晶の音を出すためにジャストな圧力を見つけるのにも苦労しました。

結晶から生まれる音が、人々の生活を豊かにし、
ある時は戦争を高度化してきました。

しかし、この作品は、結晶が生む音に感動できる感覚を
再び呼び覚ましてくれる、純粋な力に満ちています。


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